日本刀の「研ぎ」について

日本刀の研ぎ

包丁の切れ味が悪くなると家で研ぐ人もいると思います。
普通の研ぎは気になる刃の部分だけ研ぎ、切れ味を良くしますが刀の場合は違います。
日本刀の研ぎは柄で隠れている茎(なかご)の部分を除いたすべての刀身を研いでいかなければなりません。
包丁とは違い、刀は全体のバランスがとても重要になってくるのである部分だけ研いでも意味がないのです。
少しでも一部のバランス、重量が変わると刀を持ったときのバランスも変わり、武器として使用していた武士たちにとっては大きく影響してしまうのです。
よって、日本刀を研ぐ場合はたとえ一部が欠けたとしても全体を研いでいく必要があります。
まずは刀身全体のバランスを決め、地肌から刃、切先、棟などすべてをそれぞれその部分に合った方法で研いでいきます。
これは日本刀ならではの研ぎと言えるでしょう。
鍛冶職人に出すと完璧になるまで時間がかかるわけです。

研ぎで使用されるもの

日本刀の研ぎで使われるものは主に「砥石」を利用します。
砥石とは刀を研ぐために必要な石のことです。
砥石には天然と人の手で造られた人工のものがあります。
人工的な砥石よりも天然の方が刃物をより細かく研ぐことができるので鍛冶職人のほとんどは天然の砥石を利用していました。
また、砥石の粒子の大きさによって3つの種類に分かれます。
粒子が粗いものから荒砥(あらと)、中砥(なかと)、仕上げ砥(しあげと)の3つです。
また、水をかけながら研いでいく水砥石と油を使って研いでいく油砥石があります。
砥石は真四角な形ではなく、より細かく研いでいくように工夫しているかまぼこの形をしています。
刀の部分によって使い分けることもあり、精巧な刀の造りはこの砥石の種類によって決まるといっても過言ではありません。
日本刀を研ぐにあたり、砥石はもっとも大事なものになってきます。

下地研ぎについて

刀の研ぎには主に2つの種類に分かれます。
そのひとつが「下地研ぎ」です。
下地研ぎは5段階に分かれてそれぞれ5つの砥石を利用していくことになります。
まず第一段階が備水砥(びんすいと)を使います。
刀全体のバランス、形を整える作業となり、基本的な形となる棟、鎬、横手を形づくっていきます。
刀の土台を決める大切な段階です。
第二段階は改正名倉砥(かいせいなぐらと)を使用します。
第一段階の仕上げともいえる作業であり、砥石のどこで研ぐかによって大きく刀の形が変わることになるので慎重に行わなければなりません。
第三段階には中名倉砥(なかなぐらと)を使います。
中名倉砥は垂直に刀を研いでいかなければなりません。
第一・第二段階での微調整を行います。
第四段階で使われるのは細名倉砥(こまなぐらと)です。
よりきめ細かい砥石となり、さらに刀を細かく研いでいきます。
そして最終段階である第五段階は内曇砥であり、地鉄や働きを形成していく大事な作業となります。

仕上げ研ぎについて

もうひとつの研ぎ方である仕上げ研ぎは下地研ぎとはまったく違う方法です。
砥石を固定して刀を動かしながら研ぐのではなく、その逆になるのです。
小さめに砥石をカットし、手で持ちながら刀の上で研ぐようになっています。
主に六つの段階に分けて刀をより完成に近づけていきます。
刀の肌を磨き、美しい輝きにするための刃艶(はづや)、地鉄を美しくさせる地艶(じづや)、地鉄の色を引き立たせるための拭い、刃を白くさせる刃取り、日本刀ならではの光沢を出す磨き、そして最後に刀の先端を磨き仕上げるナルメとなります。
これらをより細かい部分まで施すことで刀の研ぎが完了するわけです。